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ニュー・シネマ・パラダイス/3時間完全オリジナル版のykのレビュー・感想・評価

4.8
後半は本当に涙が止まらなかった。

第二次世界大戦後のシチリアの村。
学校では当たり前のように体罰が行われ、戦地に召集された父は戻らない。
そんな暗い時代の希望として存在する映画館で、客は大きな声で泣き笑いブーイング、思い切り自分を解放する。

その裏で、仕事に誇りと喜びを感じながらも、映写技師のアルフレードは同じ道を志す幼いトトの将来を思い葛藤する。

その後のアルフレードの行動は、間違いなくトトへの愛だった。自分が得られなかったものを、手に入れるチャンスがトトにはあったから。
それが結果としてトトに、アルフレードとは別の「手に入れられないもの」を生み出してしまったとしても。

人生はどこでどうなるか分からない。不変なものなどない。
トトとエレナのように、当人たちがどれだけ望んでも、思わぬ形で歩む方向が変わってしまったりする。
いつどうしていれば理想の今になったのか、悔しくてもどかしいし、郷愁はどうしようもなく胸に突き刺さる。
ラストのアルフレードの形見は、真心を尽くして生きてきたトトへの、全てを受け入れ前を向くための最善の餞別だった。
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