いの

ニンゲン合格のいののレビュー・感想・評価

ニンゲン合格(1999年製作の映画)
4.0
キックボードとチェーンソー


キックボードに乗ったことがないからよくわからないけど、今作制作当時のキックボードってこんな音がするのかーと思ってたら、それはチェーンソーと同じような音だった。ということに最後の方で気づいた。洞口依子さんが乗っていてその後に西島秀俊が乗るキックボードは、ほんの少しだけ先にあるのかもしれない自由を、歩くのよりはほんの少しはやい速度で、希求していたのかもしれない。そのキックボードとチェーンソーは同じ音だと、わたしにはそう思えた。でも、チェーンソーで壊そうとしても壊せないなにかがちゃんと存在している。存在しているかどうかなんて、自分ではたしかなものじゃなくて、自分では確信などどこにもなにもなくて、でもそれは他者によってはじめて自分は存在していると思えるのかもしれない。冷蔵庫の静謐。14歳で事故に遭い、10年間眠っていたという西島秀俊の心に在るもの。不法産廃せずにはいられない?役所広司の空虚さ。だけでなく、登場人物の誰もが抱える欠落を、黒沢清は、独特のテンポやユーモアで焙り出す。釣り堀の水のなかで叱られて反省するポーズをみせる菅田俊の正座に笑い、菅田俊と西島秀俊の駆けっこにクスって笑い、キレると段ボールとか投げる人たちに、あれっ?段ボールに突っ込む場面をお得意としてる監督誰だっけ?と不意にフィルマで以前話題となっていたどなたかの監督のことを思いだす。あれ誰だったかな。そして大杉漣さん
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