半兵衛

スタア誕生の半兵衛のレビュー・感想・評価

スタア誕生(1954年製作の映画)
3.9
映画黄金期のミュージカル映画のはずなのに、物凄いビターな余韻を感じるのはショウビジネスの裏側を深く掘り下げているからか。本作のジュディの相手役がアステアやケリーではなく、名優ジェームズ・メイソンであることもドラマの重みを一層強調している。そして夢物語であるはずのミュージカルに現実の風を持ち込んでいるところに、赤狩り以降のアメリカの空気を感じ取れるというのは穿ち過ぎか。

ある新人スターの成長と恋のドラマパートは出来事が単調なので三時間という長い尺を支えることが出来ず飽食気味になるというミュージカル映画特有の問題が発生しているのは残念だけれど、それでもジュディ・ガーランドの華麗な歌声によるCMソングからアカペラまで多彩な曲の数々はいずれも素晴らしくて彼女の才能を改めて感じさせる。

終盤成功した主人公とメイソンのお互いの立場ゆえ別れていく場面の痛切さも忘れがたい、終盤二人が暮らす別荘での場面での窓に反射する海の不気味さよ。

でも本作でスクリーンに復帰したはずのジュディが実生活ではメイソンのような立場になっていくのが皮肉としかいいようがないし、欲に溺れようとするといくらでも浸れるハリウッドの闇を突きつけられる思いに。
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