Scriabin

ZOOのScriabinのレビュー・感想・評価

ZOO(1985年製作の映画)
5.0
フェルメールとゼブラと対称性に固執しまくりながら、ドラマも展開させてしまうのがすごい。トリックにかけられたような体験。

音の使い方がうますぎる。音を使っているというより、音も映像も一緒に組み立てられているからものすごい効果が出る。

レストランのホールからトイレへという流れは『コックと泥棒』でも見たような。

観察を軸とした自然科学への関心が芸術と重なるという現象は、ジョゼフ・コーネルを思い出させた。観察映画、教育映画としての側面を持つという点は、ブニュエルの『糧なき土地』を思い出させる。しかしゼブラの撮影のシーンはもはやインスタレーションのようで、リアルで見れるものなら見てみたい。このシーンで思い出したのが、ナイマンが音楽を作ったアレクサンダー・マックイーンの伝記映画。Vossの映像と同じくらい感動したかもしれない。

グリーナウェイの作品はギャグとセックスにまみれているのに、常に悲哀が漂っている。このレトロスペクティヴを見るまでなぜだろうと思っていたけど、それは強迫的なまでの「死」がついてまわるからだった。しかしその悲哀も、通り一遍なお涙頂戴ものではなく、どこまでも共感できず薄気味悪さすら覚える奇妙なものだろう。それでもカタルシスとともに楽しめてしまうのだから、この監督は素晴らしい。
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