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ファミリー・ツリーのEikeのレビュー・感想・評価

ファミリー・ツリー(2011年製作の映画)
3.7
監督・脚本のアレクサンダー・ペインが2004年の賞レースを賑わせた「サイドウェイ」に続いて2011年に発表した長編作。
今年も久しぶりの新作”Holdovers”がアカデミー賞に作品賞を含めて5部門でノミネートされております。

本作の主演は「サイドウェイ」への出演を熱望していたジョージ・クルーニー(結局ポール・ジオマッティに負けたわけですが…)。
従って本作への出演は正に念願かなったという感じであったのでしょうか。
これまでの彼のイメージとは異なる役柄ですが「本気度」はビンビンと伝わってまいります。

原題はDescendantsで「子孫・末裔」と言った意味で、「ファミリー・ツリー」とはちょっとニュアンスが違いますね。
事故でこん睡状態の妻を目の前にして失意と戸惑いを隠せない主人公マット。
妻の事前意思によって延命措置が打ち切られたことから別れの日に向けたカウントダウンが始まります。
結果として仕事にかまけて向き合ってこなかった娘たちとの関係修復に苦労することになります。
さらに冷え込んだ状態が続いていた妻が隠していた本心にも直面することに。
しかも先祖代々受け継いできた貴重な未開拓地の売却問題への決断を下す日も近づいて来ます。
果たしてのしかかる重圧の中でマットはどう行動するのか…。

人生なんて山あり谷あり。
面倒臭くって時には全てを投げ出したくもなります。
そのややこしさの最大の要因はもちろん「人間関係」。
血がつながった家族であってもその点は変わらない、と言うか家族だからこそ、面倒くささも一際だったりするのだ。
しかし誰も一人では生きていけないのもまた事実。
僕らはみんな誰かの子孫であり末裔なのだ。
そう考えて見れば僕らは誰もが生まれた時から決して孤独ではない。
それは実に心安らぐ考えに違いない。

本作のメインはやはりマットと二人の娘の関係修復の過程にありますが、先祖代々受け継いできたハワイの未開地を巡るサイドストーリーが非常にいいスパイスになっております。
時の移ろいの中で受け継いできた時間とともに変わってゆくもの、自らの意思で変えるべきもの、そして絶対変えてはいけないもの。
主人公の考え方の変化も物語の中で実に自然に描かれていて説得力がありました。

「サイドウェイ」同様、全く派手なお話ではありませんし、クルーニー氏のスターパワーを見せつけるような展開もありません。
しかしジンワリと物語が沁みこんでくるようなタッチは実に貴重。
特に本作ではハワイの風景・音楽が圧倒的な効果を発揮していて悲喜こもごもの物語全体を優しく包み込んでいるかのようです。
何かとゴタゴタトした状況を潜り抜けて、クライマックスに向かう頃には何故かLife goes on...というフレーズが頭の中に自然と浮かんでまいりました。
「それでも人生は続いて行くのだ…」

面倒くさいことに直面したって、肩をすくめて時には苦笑いを浮かべながら進んでゆけばイイ。
そんな気持ちにさせてくれる素敵な映画でした。
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