りょう

プロジェクトAのりょうのレビュー・感想・評価

プロジェクトA(1983年製作の映画)
4.0
 この作品が日本で劇場公開された当時は小学5年生で、友人たち5人くらいと観ました。それまでテレビの吹替版で「蛇拳」「酔拳」などをみんなで観ていて、自分の周辺ではジャッキー・チェンのブームになっていました。少し裕福な家庭にしかビデオデッキがなかった時代です。もっぱらテレビが頼りでしたが、かなり頻繁に放送してくれていたので、主な過去作をほとんど観ていました。そのタイミングでの最高傑作にかなり興奮した記憶があります。
 約40年ぶりに観ましたが、小学生のときは映画のクオリティなんかにこだわるわけもなかったので、とても新鮮な感覚でした。さまざまなシーンを106分につめ込んだ印象で、かなりのスピード感で展開しますが、メインの格闘シーンはたっぷりです。キャストの身体能力を存分に発揮した本物のアクションの連続で、そのクオリティは現代でも通用します。むしろこれをいまの映画業界で再現するのは、さまざまな要因で難しいんじゃないかと…当時の撮影現場の過酷な状況が容易に想像できます。
 物語はあってないようなものですが、アクションを際立たせる意味ではちょうどいいです。それでいて、キャラクターはしっかり描かれているので、物語への共感やエンディングのカタルシスもちゃんと得られます。全般的にコメディの作風ですが、下品なものはないし、しっかり笑わせてくれるところもいいです。
 香港カンフーには欧米などのクリエイターにもファンが多いし、いろいろと模倣されているはずです。例えば、「マトリックス・リローデッド」のメロビンジアンの洋館での格闘シーンは、チョウの高級クラブでのシーン(左右の階段の構造とか)に酷似していると思いました。
 香港ノワールが台頭する前夜であった1983年、香港カンフーの最高峰の1つとされる作品ですが、これ以外にも当時の秀作がたくさんあるので、また観たくなりました。政治的な事情などもあって香港映画が困難な時代になっていますが、新たなカンフースターの登場も期待したいです。
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