三四郎

追憶の三四郎のレビュー・感想・評価

追憶(1973年製作の映画)
3.5
大戦直前の1937年の大学反戦運動。
冒頭近くの大学時代回想シーン。
バーブラの演説は、同時代の日本の左翼たちと同じ意見だ。共産主義やソ連を信仰するなど、今となっては逆に恐ろしい。
確かに、戦前から戦後にかけて大日本帝国を含め主要な欧米諸国は、政府も資本家も貴族も華族も、共産主義を恐れており、共産主義者及び社会主義者に弾圧を行っていたが、現代から歴史を振り返ると、やり方は良くないが、正しかったようにも思う。
平和を求めるのは良いが、理想郷ユートピアを実現しようとするのは無理がある。
資本家、貴族、華族の子息の中にも、労働者や極貧の人々に同情し、左翼化した者が沢山いただろうが、所詮は、自分と立場を切り離し、一段高い所から観た、ただの「憐れみ」と「同情」からくる苦労知らずの良心と暇の持て余しではないだろうか。

最初は理想を追い求めても、人は権力を握ると変わるものだ。

「彼は自分の育った国と似ていた すべてが安易」
アメリカらしい。深い科白だ。
レッドフォードの心情はこれかしら。
「我が身容るるに狭き 国を去らんとすれば
せめて名残の花の小枝 尽きぬ未練の色か」

『我等の生涯の最良の年』はRKOの名作だが、素敵な演出だった。

レッドフォードが水も滴る良い男で海軍の軍服もまたよく似合う。そんな美男子の相手役バーブラがあまりにも微妙すぎて…。横顔は良いとして、何が残念なのか。鼻が高すぎるのかな…。子供の頃、読んだ絵本に出てきたアリクイに似てる。
バーブラの性格やインテリ女性にありがちな高慢さと不器用さが気に入らなかった。全く魅力が無い。間違っていると思い込んだら行動せずにはいられぬ正義感?周りのことを考えず自分の意志を尊重する、そんな女性は苦手だな。アメリカ文化を知っていたら、この映画をもっと興味深く観られた気がする。バーブラが体現しているのは、インテリ女性だけでなく、アメリカに生きる「ユダヤ人」の性質ではなかろうか。そして、このバーブラというヒロインをこの映画は決して好意的には観せていない。ヒロインにもかかわらず、非常に冷酷に突き放し皮肉っているように観える。

しかし、映画らしい映画だった!
最後の再会とラストシーンなんて、余韻が残り素敵だった。
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