アキラナウェイ

7月4日に生まれてのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

7月4日に生まれて(1989年製作の映画)
3.0
7月4日でも何でもない日に鑑賞。

戦争の愚かさを忘れない様に、定期的に戦争映画は観る様にしているけど、最近はベトナム戦争を意識してピックアップ。戦争は総じて悪いものだが、ベトナム戦争はその中でも断トツで非道い。帰還兵のPTSDを描く作品も特に多いと思う。

ロン・コーヴィックの同名の自伝的小説を映画化。

監督はオリバー・ストーン。
同監督の「プラトーン」の3年後に公開されたのが、本作。

同じベトナム戦争をテーマに据えていながら、今回はどうにも腹落ちしなかった。何故だろう。

主演はトム・クルーズ。ウィレム・デフォー、トム・ベレンジャーらが「プラトーン」に続いて出演。

アメリカの独立記念日7月4日が誕生日のロン(トム・クルーズ)は愛国心が強く、周りの制止も聞かず、海兵隊への入隊を決意する。1967年、ロンはベトナム戦争に従軍し、自分達が見境なく攻撃した相手が乳児を含む民間人ばかりであった事に衝撃を受け、錯乱状態で部下を誤って射殺してしまう。彼自身も被弾し、脊髄を損傷し、下半身不随になってしまう。

以下、ネタバレを含みます。















幼少期から友達と一緒に戦争ごっこに勤しむロン少年の姿に心が騒ぐ。

殺した。
死んだ。

子供達のごっこ遊びなんて、そんなものだが、モデルガン片手に森の中での擬似ゲリラ戦は笑えない。

高校生時代。流石トム・クルーズのイメージに似合う、レスリングの花形選手であり、充実した高校生活を送るロンの青春の日々が描かれる。

壮絶なベトナム戦争以降は、堕ちていく一方のロン。

衝撃的なのは、不衛生な病院の描写。
鼠が巣食い、吐瀉物や糞尿にまみれた入院生活は精神的にもかなりキツイ。

車椅子生活を余儀なくされたロンの半生は、彼から自尊心を奪い、戦争に参加した意義を問う日々が続く。

クランクインまでの1年間を車椅子で生活し、役作りに余念のなかったトム・クルーズの演技は確かに素晴らしい。しかし、余りに卑屈で、自分達こそ政府に騙された被害者であると大声で訴える姿が、不幸の押し売りにしか見えなかったのが残念。

信心深い母親に対して、卑猥な言葉を不躾に吐き捨てるロンに辟易してしまう。戦争は確かに非道いし、自由を奪われてしまった恨みもわかる。しかし、それを家族にぶつける必要はないでしょう。

メキシコへと渡り、売春婦と行きずりの関係を持つロン。そこで知り合った同じく下半身付随の帰還兵チャーリー(ウィレム・デフォー)との関係性も、途中でぶつ切りで終わってしまい、この編集では、何を描きたかったのかが伝わらない。

何がきっかけだったのかよくわからないまま、ロンは何故か急に真人間になり、反戦運動に傾倒し、1976年、『7月4日に生まれて』を出版。民主党全国大会で演説の機会を得るまでに至る。

ロンの心境の変化がどうにも掴めぬまま。

幼い頃から母親に、「お前はいつか、国民の前で演説をする様になる」と夢を語られてきたロンが、遂に、演説を…

する前で、暗転。エンドロール。

聞かせへんのかーーーーーい!!!!
盛大にツッコんだ。