93n35i5

ふたりの人魚の93n35i5のレビュー・感想・評価

ふたりの人魚(2000年製作の映画)
4.0
何故かいつまでも記憶に残り、ふとした瞬間に場面を思い出すタイプの映画。
カメラを回し物語を第三者的に訥々と語る彼も間違い無く渦中の人ではあるのだが、それでもしっかりと語り部に徹し物語を見届ける役割を果たす。背景となる侘しい薄汚れた街並が非常に酩酊感をそそる雰囲気を醸し出しており、そこで人物達それぞれの想いが交錯し、それぞれの物語が紡がれ、それぞれの行く末に向かう。
幻想だと思っていた話が真実であり、件の二人は物語のように連れだって死んだ事への感傷、もう自分は誰からもムーダンのようには見つけて貰えないし探し続けても貰えないだろうという事を感じ取った哀しみ。それ故にメイメイが「そんな話は物語の中にしか存在しない」と呟き自ら姿を消すと決めた寂しさを想うと胸が痛い。
しかしながら、この物語の登場人物達の誰にも究極的な不幸せは無かったと個人的には思う。
勿論究極的な幸せも存在しなかった。だからこそふわふわとしていて淡くて美しいのだと思う。
93n35i5

93n35i5