オリンピックのマラソンで優勝した父親ウィル・マドックスは競技者の道を歩んでいる子供たちにも勝者になることを執拗に求める。馬術競技で優勝経験も、また連敗経験もある母親の助言を他所に、親父の行き過ぎた拘りが禍いしてか次々と子供たちに不幸が訪れ父親の元を離れていく。制圧的で如何にもな毒親の様相が見ていて不快だった。
父親は悔恨するものの、それでも尚、変容には至らない。自分の名前を冠して創設した“マドックス杯”なるマラソン大会で年甲斐もなく再び自分が走ることに…。これにはドン引き。でも父親の心情は彼の台詞でよく窺えた。なるほど…そういうことだったのか。ただ、これを理解し肯定的に受け止める三男ポールとの協走へと傾れ込む感動盛りの終盤には流石に白んでしまった。思えばウィルの右腕ネイティがこの一家を支えていたようなもの…彼の存在はとても大きかった。
根性論一筋の父親を中心に据えた、今とは全く違うドラマ展開に1970年代の古さが感じられ逆に貴重。この作品が感動とともに受け入れられた時代が確かにあったのだ、と思い直す。
全編にわたってフランク・シナトラで有名なあの「マイ・ウェイ」が掛かる。ソフト・リリースが大幅に遅れたのは楽曲の著作権絡みだと思うがどうだろう。その分HDマスターで映像はとても綺麗だったのは有り難かった。もう一曲、ザ・ワイルドワンズの「思い出の渚」(1966)に似たインストが度々掛かり妙に耳に残ってしまった。