一人旅

パーフェクト・センスの一人旅のレビュー・感想・評価

パーフェクト・センス(2011年製作の映画)
3.0
デヴィッド・マッケンジー監督作。

未知の伝染病が蔓延した世界における男女の愛の軌跡を描いたSF恋愛ドラマ。

デヴィッド・マッケンジーが監督を務め、ユアン・マクレガー&エヴァ・グリーンが主演に起用された英国産SF恋愛ドラマの異色作で、人間の五感を奪う未知の伝染病が蔓延した世界で出逢ったシェフの男と科学者の女の愛情を描いています。

「伝染病の蔓延=ゾンビ映画」の図式がすっかり定着してしまった昨今の映画界において、“人間の五感を奪う伝染病が全人類に感染したら…”というユニークなシチュエーションで勝負に出た異色のSFロマンスで、嗅覚→味覚→聴覚→視覚…と段階的に五感の一部を奪われていく男女の邂逅と愛の行方を描いています。

嗅覚や味覚を奪われても人間の見た目に変化は無いため、壮大な設定のSF作品ながら比較的“低予算”で映像化可能な内容となっています。しかしながら、五感の一部を喪失することによる、主人公の男女を含めた人々のパニック心理&社会的影響がリアルに描かれている点が特色となっていて、例えば、人類規模での味覚の喪失は外食産業の変容(味ではなく“食感”を提供するスタイル)に繋がりますし、聴覚の喪失は言葉から手話によるコミュニケーションへの移行をもたらしていきます。

段階的に五感を喪失していく人々の姿は終末映画としての絶望感を充満させていきますが、その一方で、たとえ感覚を失ってもその中で希望を捨てず生きようと努める人々の生存力が力強く描写されていて、それは五感の有無を問わない男女の精神的な繋がり(愛情)として儚くも美しく結実していきます。

五感が喪失する絶望的状況下における男女愛の軌跡を描いた異色のSFロマンスで、W主演となったユアン・マクレガー&エヴァ・グリーンの繊細かつ大胆な演技も気合十分であります。
一人旅

一人旅