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レナードの朝の傘籤のレビュー・感想・評価

レナードの朝(1990年製作の映画)
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医師でありノンフィクション作家でもあるオリバー・サックスの原作を元に作られた映画。嗜眠性脳炎という原因不明の難病に向き合う医師と、そこから一時的に回復した男の心の交流を描く。

主演の二人の演技が非常に良く、特に難病を抱える役を務めたロバート・デ・ニーロが素晴らしい(まあ、この人は役に入ろうとするととことんやる人なので、今更言うまでもないですが)。
脚本、舞台美術、楽曲なども綺麗にまとまっており、彼ら二人の熱演を際立たせていた。

お話としては、嗜眠性脳炎の患者たちが新薬によって一時的に回復するが、その後徐々に元に戻っていくというもので、どこか『アルジャーノンに花束を』を彷彿とさせる。共通するのは、「人間」である相手と向き合い、「生きる」とは何かを考えさせるその主題だろう。

最終的にレナードたちの病は治らなかったわけだが、そこで彼らと共に過ごした時間はかけがいのないもので、セイヤー医師の心も前向きに変化させる。
だが、視点を変えて患者や、その家族の立場になってみれば果たしてこれは「いい話」だったのだろうか?

いまだに嗜眠性脳炎の原因は不明のままであり、どうにもやりきれない気持ちに襲われる。実話を元にしているからこそ、良い映画である以上にずっしりとした後味が残る映画だった。
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