倦怠期の中年男性と新婚生活にとまどう女性が、滞在先の東京でひとときの恋に落ちるという旅ドラマの王道映画。
ある意味ありきたりのストーリーだが、2人の距離感の描き方が秀逸。バーでタバコの火を貸したり、通りすがりに挨拶したり、微妙ながらも意識するようになる展開は旅先でのリアリティーがある。お互い既婚だけに自制も葛藤も経た上でのラストはベストな展開だろう。
何より東京の一日をこれだけ美しく魅力的にそして違和感なく描けた映画はあるだろうか。2000年代初頭の日本を描写する何気ない会話やふるまい、景色の描き方が自然で嫌みが全くなく、日本人の良さも悪さも全て包容してくるこの映画の画面構成の魅力に圧倒された。