垂直落下式サミング

ロスト・イン・トランスレーションの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

4.2
女流監督として独特なセンスを発揮するソフィア・コッポラ監督が、東京都心を舞台にして撮影した作品。
「コッポラ」という演芸界の名門の家系に生まれ、偉大な父のもとで生粋のニューヨーカーとして育った監督の研ぎ澄まされた感性が発揮された作品である。
彼女の作品には常に都会的な孤独が描かれる。その孤独は、日本人がもともと持ち合わせていて、今や失われつつある感性と共鳴し、日本の中心地である東京という場所が持つ無国籍性を際立たせていた。
誰であろうと歓迎されはしないし、かといって排他的に振る舞われるわけでもない。この都市はすべてを受け入れているようでいて、懐が深いわけではなく、何かで溢れているようで実際には何もないのだ。
理性的な発展の代償として、交雑し磨耗し同格化されていく人々と文化。人も物も夢も、酸いも甘いも、すべてが溢れているような、そんな幻想を夢見てその街に一度足を踏み入れてみれば、そこは冷たくもなく、温もりもない。
そんな異国の地で出会うスカーレット・ヨハンソンとビル・マーレイの関係は、互いに似たような内面的な孤独を抱えていて、それを理解し合える良い友達という立場から始まり、男女の生々しい情愛などではなく、自然な流れで儚く清純な恋に落ちてゆく。その数日間の恋路は、ふたりの迷い人が慰めあうだけの関係でありながら、それこそが真の愛の形だと思わせる。
ソフィア・コッポラの半自伝的な作品とのことで、当然ながらストーリーやキャラクターの心情には、彼女の実体験が反映されているのだが、この出来事には元夫だったスパイク・ジョーンズ監督の野郎が一枚噛んでいるのだ。
こいつは、旅行先で新妻をほっぽらかしてキャメロン・ディアスと遊んでいたクソバカである。しかもコイツ、菊地凛子とも破局してやがる。いまだにジャッカスなんぞとつるみやがって。アカデミー賞作品を手掛けた名監督なのに、イマイチみんなから尊敬されへんのそういうトコだぞ。