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ロスト・イン・トランスレーションのmotoのレビュー・感想・評価

4.3
この映画に対する思い入れはちょっと異なる角度からかもしれない。

この映画が製作された2003年の前年から10年以上、僕の少年期は外国で暮らしていた。つまり、2000年代前半にある東京の景色は、自分の記憶の中では欠け落ちているようなものである。補完できるのは時に見ることができる日本のTV番組・映画による東京の夜景のみである。
実際に自分自身東京の夜に身を置いたと言う身体的な記憶がないために、不思議と東京の夜景は何か、象徴的な、憧れの対象でもあった。

この映画を見た時、間違いなく自分が脳内に作っていた東京の幻想?2000年代前半の残像?と合致していた。夜の東京の描写で思わず声が漏れ出たぐらいだ。

ぎりぎりセピア色に染まりかけたような、東京の都市の夜景はこんなにも美しいのだろうか。不思議とこの時代のメディア(写真・映画などなど…)についての記憶は同じような質を持っている。今は完全にデジタル化された世の中において、記憶ももはやデジタル色によって染められているようで、あの褪色するかしないかの状態の色彩の記憶をもはや紡げないのではと考えると少し寂しくもある。
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