Nori

ホタルのNoriのレビュー・感想・評価

ホタル(2001年製作の映画)
3.0
今世紀初頭、まだ戦争を知る者が多くいた時代。特攻隊に列される者の基準について調べたことはないけれど、ある程度の頭脳がないと乗せられないのでは?と思う。いや、彼らが生きていたら、個々どんな人生を歩み、また、日本もどんな姿を見せていたのだろう。
彼らは、時代も国も選べなかったし、与えられた条件の中で生きるしかなかった。

でも、それってどの時代、どの国の人間も同じ、と言えなくもない。この作品を観た我々も、今この時代や国という制約の中で生きるしかないのだから。選択肢がある分だけ、また、国からの強制力が弱い分だけ、まだ恵まれているという自覚はあるけれど。

朝鮮や台湾の人々が日本人として戦うことを強いられ死んでいったこと、その言葉や文化を踏み躙った歴史を背負って我々は生きているのだということ。忘れちゃいそうだけど、無自覚じゃダメだろうな、と思う。個人的に。

そして、同じように我が国が蹂躙されようとしたとき、私はどう行動するのだろうか、ということを自問する。歩兵の一人として、戦うことを選択できるだろうか?ドローンの攻撃に晒されたり、地雷で脚を吹き飛ばされる未来の姿に耐えられるだろうか?徴兵逃れをしない、と高らかに宣言する覚悟はあるか?今のウクライナの現状と重ね、答えのない問いかけが、平和な国に住む私の脳内でこだまする。

重き荷物を背負って人生という道を歩いた、高倉健演じる山岡と、その妻・知子。長く共に歩むことでしか得られないものは確かにあるだろうな。
そして、山岡の言った、人にはそれしかできない、という「それ」を、実践できる人間でありたい。そう思った。
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