けーはち

ホタルのけーはちのレビュー・感想・評価

ホタル(2001年製作の映画)
3.4
漁師として暮らす特攻生存兵とその妻(高倉健、田中裕子)が朝鮮出身の特攻兵の遺族に遺品を届ける話……が軸だと思うのだが、昭和天皇への殉死者や、腎臓を患い余命幾許もなくなった妻とのドラマなど、色々トピックを盛りすぎ方向性が発散した感はある。ただ、時代背景を昭和天皇の崩御直後にし、知覧の富屋食堂の女将さんに「特攻隊は殺されたんだ‼︎」と言わしめたのは、降旗監督の譲れぬ主張だろう。色んなものが「昭和」とともに終わりを告げ、各人なりのケジメをつける流れがあり、特攻隊のエピソードはその1つ……という大局的視点の中で、「でも昭和天皇が死んだ今だから言うけど、アイツに殺された犠牲者が特攻隊なんだ、忘れずに語り継ごうぜ!」という主張だけアンバランスに。昭和天皇=現人神の神話の崩壊で、彼への複雑なクソデカ感情が顕になるのはその時代の人らしくて、嫌いになれないね(ウチの祖父も天皇の近衛兵から敗戦後は一転、共産主義に傾倒するも、佩刀は大事にしていた)。