みんと

水の中のナイフのみんとのネタバレレビュー・内容・結末

水の中のナイフ(1962年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ポランスキー初期の傑作。

たった3人の船上での物語。この限られた材料の中で、それぞれに緻密な感情を与える。
それを映す構図がとても面白いと思った。「船」という小さい舞台、小さい世界で、顔いっぱいに映し出したり、また一方で対照的な相手は小さく映したりなど、なかなか独特な映し方で印象的だった。
あと、ナイフ。ナイフが出てくるシーンはすべて、年齢は違うが「幼稚性」という共通点を持つ男2人の狡猾さを映していた。

個人的に一番衝撃的だったというか、面白かったと感じたのは妻である。倦怠期で子供な夫に飽き飽きしつつも、更に年齢的にも子供な青年に抱かれる。しかし、それをきっかけにすらして自分を責められない立場に置き、何なら夫に究極の選択をさせる。そしてあの青年にはなかった夫の大人な部分を再確認出来て倦怠期を克服する。
女性が男性の幼稚さに呆れる感情、嫉妬させたい感情、そして結末まで観て分かる「女性特有のずる賢さ」みたいなものの描き方がとても上手いと思った。しかもそのきっかけになるのが若造っていうね笑

全体を通して、3人の大人げない滑稽さがコメディー的な笑いを、また、その滑稽さには似合わないジャズがバックで流れることで異様な気持ち悪さも誘う。一方で、「太陽がいっぱい」のように、その滑稽さがこれから異常な行動に転じるのではという恐怖も誘う。
まさに、心理劇かつサスペンスという感じ。素晴らしい…。
みんと

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