【久々の長文レビュー😁】
孤独なFBI捜査官ジム・ウィルソンを演じるロバート・ライアンと盲目の女性アイダ・ルピノが危険な場所(後半の雪山)で邂逅するという裏コンセプトによって支えられている謎多きフィルムノワール。
ハリウッドらしい通俗的なサスペンスを装った一種の実存主義映画という点がユニークで、鬼才ニコラス・レイらしく即物的な演出や脱構築的な展開が数多く見受けられる怪作でもある。都会的ムード満点な音楽は名匠バーナード・ハーマンが担当。
( 製作に至る迄の経緯)
撮影当初、ジェラルド・バトラーの小説「Mad with Much Heart」にこだわったニコラス・レイに対し、RKOの名プロデューサー、ジョン・ハウスマンらスタジオサイドが難色を見せ、製作はかなり難航したと伝えられている。
結果的にレイが心に闇を抱えた男(ライアン)を、丹念な心理描写で抉り取った本作はのちに再評価され、今やレイの代表的傑作の1本であると共に、50年代アメリカの暗部を鮮烈に描き出したフィルムノワールの傑作として位置付けられている。
また、主人公ジム・ウィルソンと共に犯人を追う被害者の父親役でジョン・フォード映画の常連俳優、ウォード・ボンドも印象的な演技を披露している。
ラストで主人公のロバート・ライアンと盲目の女(犯人の姉)アイダ・ルピノが希望を叶え手を結び合うエンディングを敢えて残すことで、レイのデビュー作『夜の人々』と同様に、世間から疎まれた男女の「結び付き」を描くことに固執する映画作家的野心が、ヌーヴェルヴァーグの監督たちを魅了したのは至極当然のことと言える。
本作とロバート・ミッチャム主演の『ラスティ・メン/死のロデオ』がニコラス・レイ作品中でも最右翼、相当にハイブローな映画だと思っている。展開が読めない、何が起こるか予測不可能という未知なる感覚に陥るフィルムノワールの古典。