艶やかな夜の街の撮影に重なる自問自答のモノローグ。タクシードライバーの元ネタの一つにして、ニコラス・レイの秀作。
毎晩街をパトロールする警察官(ロバート・ライアン)は孤独と閉塞感に苛まれ、容疑者や参考人への暴力を厭わない。やがて強引な手法を咎められ、田舎での事件捜査に回される。そこでは、娘を殺された父親が「裁判なんて要らない、俺が殺す」と警察官以上にイキリ立っている。捜査の過程で犯人と彼を支える視覚障害の姉(アイダ・ルピノ)の境遇を知り、主人公の振る舞いが変化し始める。
影と暗闇のノワールかなと思いきや、ウィンドリバーみたいな雪国での少女殺人事件の捜査に移り、メロドラマ要素が増える。黒から白への転調が鮮やかだ。暗闇に生きる視覚障害の女は「誰かを信じることでしか生きられない」と言い、雪原を彷徨う。彼女とのやりとりを通して、主人公や父親の荒んだ心が白日の下に晒されていく(まだ子供じゃないか…と冷静さを取り戻す父親)。都会のシーンと対比するように、田舎では扉を開けて、フラフラ〜ッと外へ歩み出る姿を収めているのがよい。
主人公の心の救済に帰着していく展開や、手持ちカメラを使った大胆な撮影も意外性がある。ただ、パーソナルな結論に行くのは結構だが、そのお膳立てとして少女が殺されてしまっているのは気になるところ。また、例えばダグラスサークの「心のともしび」は、孤独な盲目女と敵対者として現れた男が最後に結ばれる点で似ているが、あちらの方が行動動機には何重にも捻りが加わっている。苦しみに耐える女の「聖性」に男たちの心が浄化される今作の展開は類型的に感じた。