りっく

突然炎のごとくのりっくのレビュー・感想・評価

突然炎のごとく(1961年製作の映画)
4.1
愛と人生の喜びにつねに真剣だが、真剣の度が過ぎて、どこか危ういところがあるカトリーヌ。いきなりセーヌ川に飛び込むことも辞さない女性だ。しかし、カトリーヌを囲むジュールとジムは、彼女のお陰でこの上なく純粋な愛と友情の喜びを満喫することができた。束の間の青春の特権が描かれる。

だが時間は残酷だ。戦争で引き裂かれた二人の男が再会したとき、愛と友情は両立が叶わず、曖昧な男女三人の共同生活が始まる。映画のリズムも前半と後半ではガラリと変わる。その転調を描き出すトリュフォーの演出力よ。

軽やかさが重苦しさに、喜びが苦しみに取って代わられ、カトリーヌの目と心の病が進む。その彼方から、一見軽妙に見える映画の重い主題が姿を表す。死の誘惑だ。生の喜びの極みにセーヌ川に飛び込んでみせたカトリーヌは、同じ身振りをもって死の誘惑に屈するのだ。
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