ねぎおSTOPWAR

突然炎のごとくのねぎおSTOPWARのレビュー・感想・評価

突然炎のごとく(1961年製作の映画)
4.2
「大人は判ってくれない」でカンヌに登場し、ヌーヴェルヴァーグを代表する監督となったトリュフォー、初期の作品です。

「愛してる」と男は言った
「待って」と女は言った
「抱いて」と女はいいかけた
「うるさい」と男は言った

冒頭に出てくる意味深な言葉。作品自体もいわゆる常識では計り知れないストーリーなんですね。ジャンヌ・モローの魅力が画面にあふれ、それが作品全体をリードしていると言っていい存在感です。
単純に言うとカトリーヌ(ジャンヌ・モロー)をめぐるジュールとジム男ふたりの三角関係が主軸ということなのですが、うーん、むしろ三人の結婚生活という印象でした。

《映像的なこと》
とにかく3人の配置、背景、カメラ位置の選び方に感動。
映像の美しさを堪能できます。いやあカラーで撮影していたらどんな映像になったのでしょうね。観てみたい。

細い橋でのかけっこのシーン、後ろ向きの撮影が疾走感もありつつ素晴らしいです。
また、火がドレスに引火するシーン、この時代は命がけでは?

ジュールとジムが遺跡を訪れるシーンは、ドリーズームで撮影。

自転車を先行する車両(と思います)から後ろ向きに撮る絵ですが、トリュフォーお気に入りですね。「あこがれ」でも主人公の自転車は印象的でした。
今作では複数の自転車が分かれ道で分散していくというストーリー的な意味も持たせつつ観客の視線をうまく混乱させるようなとても面白い映像になっています。
車と違って風が感じられて心地いいです。周囲に映る季節の香りも漂うような映像で、とても好きなシーンです。
同じフランスのジャック・タチ監督も自転車をよく撮りますが、基本カメラをPANして駆け抜ける自転車を撮ります。