jonajona

地獄の警備員のjonajonaのレビュー・感想・評価

地獄の警備員(1992年製作の映画)
5.0
面白い。
松重豊がこわい
大杉漣がきもい 

クリーピィとかしかちゃんと見てなかったので黒沢清の作品を追いかけていきたい。恐怖表現ほんとにすごい。恐怖のハッピーセット。幸せ素肌。ようわからんけど。
ほんで予想外に男社会に女の人が迷い込んだ寓話なかんじが好きだった。

この時代背景でこんだけ男社会を皮肉りながらそこで翻弄される女性主人公を見せつけられるホラーってジャンルはやっぱりバカにならないね。見せ方が秀逸だった。

警備員がぶん殴ったら相手がぶっ倒れて体をガタガタ痙攣させ変な事喋り出すシーンが天才的すぎて感動した。一瞬訳わかんなかったけど妙なリアルさがあるから超怖い。普通ぐふっ!とか言うのに変な言葉を大声で喚き出すの。こええよ

松重豊演じる地獄の警備員が、普段主人公が生活してる仕事場の男達の醸し出す男尊女卑感の突き抜けた先に待ち構えてるキャラクターというキャラ配置の取り方がすばらしい。『ブラックフォン』の街全体の暴力性、抑圧性の結集としての『グラバー』というキャラと通じる所があり勉強になる。ロッカーに人を鮨詰めってのはかなりショッキングで素晴らしい。
単純に殴る音、タイミングのタメと速度、照明の加減や構図、動きと音の不気味さだけでここまで怖く見せられるのは何かある。何があるかはまだわからん!

別な話、地獄の警備員が生活してる地下の配電所?みたいなスラム空間。ああいう村上龍の『インザミソスープ』のアメリカ人、クリーピィの香川照之、も御用達の『ヤベェ奴の家行ったらがらんどうな荒み空間』ていう展開大好き。
また別な話、まともな先輩女性社員の高田さんがめっっちゃ声も顔も髪型も二階堂ふみにそっくりでおどろき。ほんとに似ててかわいい。由良宣子さんって女優さんかな。

あと、テレックス?ていうファックスではない謎の機械が出てきたんだけど、あんなのが昔はあったんやな。見た事ない時代の機械ってワクワクする。


◯男社会描写(マンスプ、パワセクハラ)

ー座りたまえと椅子に手を差し出して座ったお尻に上げざまの手をそっとタッチ。わざとか事故か分かりづらい加減で。

ーなぜか自分の下腹部を晒してインスリン注射を打つ様を見てもらおうとする部長。パンツ一丁なのに言い訳を一枚挟む小賢しさ。

ー残業しますと言ってカーディガンを目の前で広げようとした女性社員(主人公)に対して、そのカーディガンを縦に割くように力で無理やりこじ開けて顔を見ながら『なら僕も残ろうかな』。『力』で『むりやり』ということに無自覚な態度がやばいと思う。上手いシーン。

ーエレベーターでなぜか男優先。満員の男たちが乗ったエレベーターが閉まるのを見送る主人公。こういう夢たまにみる。

ー『すみません◯◯さん知りませんか⁉︎』と社内で別部署の男に聞いたら怒鳴りつけるように『しらねぇよ!』。時代なのかどのシーンでも主人公に男性社員の受け答えの当たりが強く、さらに主人公はそれを当たり前のように(面食らった表情も見せるものの)受け流してる。

ー殺人現場を目撃し螺旋階段を駆け上がり逃げようとしてる最中に助け舟のように同僚男性が上からやってきて安堵するも、彼が『自分が事情に納得するまで肩を掴んで上にも通さんよ』でまあまあ落ち着きたまえよ、という態度なのがマジで状況も相まって怖いし苛つく。女性の恐怖で脱力した力では上に上がれない無力感みたいなものをシーンで巧く表現されてる。超上手い。
こういう時に『ちょっ、一回落ち着いて事情全部俺に話してみ?』みたいな奴めっちゃ嫌い!笑
オメーに話してる間に追いつかれたらどーすんだどけカス!

ー自分の落としたイヤリングを勝手に耳につけて出勤される。しかも相手は殺人鬼。

ー所用で立ち寄るとついでにお茶汲みをさせられる。(まあホンマすまんって言ってたけどねあの人は)

【今日の名言】

俺を理解するには
お前はちょっとばかし
怖い思いをする事になる…
jonajona

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