jonajona

ロバート・アルトマンのイメージズのjonajonaのレビュー・感想・評価

4.5
早稲田松竹のアルトマン特集で見逃して終わった…と思ってたらアマプラでしれっと公開されてたので嬉しかった。
たぶん病んじゃってる主人公の妄想と現実を混同した世界観を映像の中で一緒くたにみせてくる。

最近だと『ファーザー』がこれの影響をもろに受けてるだろうことがわかる。

Filmarksを見てて気付いたけど夫、事故で死んだはずの間男、夫の友人で不倫相手の男、の3人の名前がそれぞれ俳優さんの本名を交換させた名前にしてるのもかなり面白い。
作中でも3人の立ち位置は時々入れ替わり主人公にとって都合のいい存在、主人公にとっての優先順位などで顔が変わったりするらしい。こういうのも夢っぺぇ。

【本作に出てくる夢描写】

◉電話口で気もそぞろに友人の話を聞いてると突然知らぬ女の声で相手がお前の旦那は不倫してるわよと語りかけてくる。(電話が混線する。他にも交換士からの電話かと思いきや旦那が喋り出したりとにかく会話がとびとびになって相手はすでに喋ってる。)
そもそも電話機が家に多すぎるのがかなり不気味。3歩歩けば電話、というように広い家の至る所に電話があって気が休まらない。現代か!!

◉旦那の浮気を疑いそんなわけないじゃないかと和解の涙の後キスをするのだが、カメラが2人の口元に寄り離れた時には夫は誰か知らんハゲ男に入れ替わってて絶叫する(その後すぐ元に戻って旦那が困惑してるのもこわい…)
不貞を疑うと同時に、自分の中にも他の男の可能性が生まれてきててそれが無意識のうちに立ち現れたと見えるし、単に旦那が自分の知らぬ別人になってるような気分が投影されたとも取れる。何にせよ主人公の神経衰弱的なメンタルが反映されてる。

◉丘の上になってて視線の先の遠く湖畔を見下ろしてると向こうにあるお屋敷に自分が旦那と乗ってきたのと同じ車種の車が乗り付けるのが見える。あれ、おんなじ?と背後の車を見返し湖畔に意識を戻すと車から降りてくるのは自分自身。いわゆる瞬間移動なのだが、自分が少し先の未来の自分自身を見て、見た瞬間にそれが現在の自分になるというのはとても不思議で面白い描写だなあ。さらには湖畔のお屋敷にいる主人公が丘の上の人影を見て『?』て顔をするシーンもありますます謎が深まる。

直前に旦那が先に行っててくれ、と言ったこともトリガーとなってるのかもしれない。主人公はいや一緒にいくと断るが意識を向けた時には連想的な流れに呑まれて先へ先へと身が(意識が)進んでしまう。
夢ではしばしばあることだけど先に進んだ意識は直前のことを思い出せなかったりする。丘の上の人影を見るシーンはその表れなのかもしれない。

◉家の中にあるガラス細工の水玉装飾を眺めてカメラが寄っていくと、車中にある同じガラス細工に場面はすでに切り替わり、主人公は当たり前のように車に乗ってる。これも瞬間移動。同時に映画でよく使われる場面転換の小技のひとつでもある。似た形状のものを写したジャンプカット。コマ取りの絵の繋ぎ合わせ、イメージの繋ぎ合わせ。映画と夢はやっぱり相性がいい。

◉夫が2人に分裂する。会話の中でかつてバレないまま飛行機事故で死んだ不倫相手の男だということがわかってくる。夫と不倫相手は立ち替わり入れ替わり表れる。別荘に主人公を残して狩に出たり顧みない夫の代わりといった具合に間男が入れ替わる。

◉犬がどこまでも主人公を嗅ぎつけて追いかけてくる。犬種は違ったりするが終始主人公は訳もわからず恐怖を感じるのか犬が現れると逃げ回ったり追い出したり。最後のシーンでもそんな犬がドジャン!ときて真打ち登場感がおもしろかった。羊飼いの犬がモチーフになってるぽくて悪事を嗅ぎつけられるという心理が働いてるんだろう。過去の罪から主人公を切り離させてくれない存在として犬がいる。

◉車を運転してると追い抜いた人影が自分自身。
のちにその自分のところまで戻りカーアタックで影から突き落とし、子供と話してる時に取り繕うために嘘で言った?『今日影の上から人が落ちたらしい』という噂を現実のものにする。未来と過去が交差してる。
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