ろくすそるす

蜘蛛の瞳/修羅の狼 蜘蛛の瞳のろくすそるすのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

 『蛇の道』の続編ということになっているが、ストーリー的な直接のつながりはない。前作の新島の復讐を行使した相手と本作冒頭の犯人(寺島進)が違うからだ。でも、復讐を成し遂げた後の新島の空虚感が描かれるという点でテーマ自体は引き継がれていると思う。
 この作品はソリッドでシンプルな「蛇の道」に比べ、シュールなシーンの挿入が要所要所でなされている。たとえば、急に化石の採掘が始まったと思えば、鬼ごっこをやり始めたりするところに顕著だ。静謐と暴力の関係性とかキャスティング(ダンカン、寺島進、大杉漣)などの理由も相まって、北野作品を意識した作品になっていると感じた(とくに釣りをするシーン)。
 復讐を終え、妻と二人の静かな生活を営む新島のもとに昔の知人である、岩松(ダンカン)がやってきて仕事に協力してほしいとやってくる。岩松の仕事は貿易関係と伏せていたが、その実状は組織からの依頼を受けて殺人を代行するという恐ろしいものだった。だが、空虚さはさらなる空虚さを生む。岩松の裏切りによる殺し合い。その渦中に佇む男のやりきれなさが展開される。
 特に、大好きなシーンが二つある。一つ目は、逃げまどう坊主を林の沿道で取り囲んで撃つ場面。そして、もう一つが、新島に指示を出す幹部(大杉漣)が、歩く新島の横を車を徐行させながらついてくる場面(しかも、バックでも追ってくる!)は思わず吹き出してしまった。
 最終部の殺したはずの男が車椅子を押されて、生きていたりするところに、(中盤の白い布を被せた木の柱は伏線か)現実と幻想が入れ混ざる不気味さが出ていて、恐ろしい。
 感性で作られた映画だが、とても面白かった。