半兵衛

蜘蛛の瞳/修羅の狼 蜘蛛の瞳の半兵衛のレビュー・感想・評価

3.0
復讐を終えだらだらと生きる新島に高校時代の同級生の岩松が一緒に仕事をしないかと持ちかけられ参加するが、実は岩松は殺しを専門とした仕事を手掛けていた…。『蛇の道』の続編的作品だが『蛇の道』とは関連性が薄く繋がりも復讐というキーワード以外にないので、それぞれを別次元の作品として見るのが正解かも。

話の内容も何が起こるかわからないサスペンスがあった前作に比べて、黒沢清作品特有のダラダラした雰囲気が濃厚で彼のファン以外の人にとっては飽きやすい作品になっている(少なくとも私はそうであった)。かと思うと突然ある出来事が起こり驚くが、次第にその流れがパターンになってくるのでかったるくなってくる。また黒沢監督によるゴダールのような意図的にずらした編集(哀川翔が仕事をやめると言い出す→屋台で飲んだくれた哀川にダンカンが説得する→何故か哀川が自分の部屋にいるというドラマの見えない流れ)も私にはキツい。

でも一番の問題は肝心のドラマが掴めないまま映画が終わることだろうか、確かに大組織に逆らう岩松というドラマの軸はあるがドラマの流れが画面外で展開され画面に映っているのは淡々とした登場人物の行為のため終始困惑した状態になってしまうのだ。気づいたときにはドラマの流れが変わり、誰かが突如死んでいる不思議な世界。

大杉漣の怪演は面白いけれど、映画に貢献しているのかと言われれば困ってしまう。それでも車に乗りながら歩いている哀川翔に説得するシーンは映画史に残る名(珍)シーン。あとどう見ても考古学の研究者にしか見えない菅田俊の殺し屋のボスに見えない演技、そしてテープに縛られた状態で哀川翔にボコボコにされちゃんと反応するという難しい仕事(千葉真一曰く、体が動かせない状態で暴行される演技をするのは筋肉がないと出来ないとのこと)をこなす寺島進の見事な役者魂。

田村正毅カメラマンによる不思議な横移動のカメラワークが不思議な世界観を形作る。
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