猫脳髄

フェノミナの猫脳髄のレビュー・感想・評価

フェノミナ(1985年製作の映画)
3.7
ダリオ・アルジェントがオカルト・ジャッロ「サスペリア」(1977)から正調ジャッロの「シャドー」(1982)を経て、ふたたび超自然要素を絡めたサスペンスを手掛けた。

昆虫との感応力を備えるアメリカ人留学生のジェニファー・コネリー(またも寄宿舎である)が、スイスで陰惨な連続殺人事件に巻き込まれ、昆虫学者ドナルド・プレザンスの助力を得ながら、事件の真相に迫るという筋書き。

アルジェントはどうしても正調ジャッロに寄ってしまい、犯人探しにまい進するので、「サスペリア」はやや中途半端な作品になった。本作は謎解きに軸足を置き、前半では不気味な能力として寄宿舎で忌避されてしまう主人公の感応力が、犯人探しの手段として描写される(実は真に有効だったのはコネリーの能力ではなく、ハエの死体探査力だったわけだが)。

しかし、コネリーとプレザンス以外の登場人物が平板になっているのと、コネリーの夢遊病気質から事実関係がボケてしまい、肝心の謎解きに向けてサスペンスが高まらないという失態を犯している。犯人探しから急転するフルスロットルのゴア描写には目を奪われるが、ラストに向けての展開(電話のクダリや鉄板、チンパンジー)はコントめいていて笑うしかない。相変わらずゴブリンの音楽はいいが、サスペンスが高まるシーンに歌詞ありのハードロックという選択はだいぶ興を削がれた。

このほか、「サスペリア」に続き、アルジェントは本作でも本筋と関係ない「写り込み」を使用している。「サスペリア PART2」(1975)では重要な意味があったが、二番煎じ以降はためにならない。
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