leyla

ヴェラ・ドレイクのleylaのレビュー・感想・評価

ヴェラ・ドレイク(2004年製作の映画)
4.0
人工的な妊娠中絶が法律で禁止されていた1950年代のイギリス。もし、暴力によって望まない子供を宿してしまったら?貧困のため育てられないのに子供を宿してしまったら?ヴェラ・ドレイクは彼女たちを助けるべく違法行為を行う。

途中までは人々のためにあくせく働き、温かな家族と慎ましく暮らすヴェラの様子が淡々と描かれます。

いつも笑顔で鼻歌を歌いながら家事をする様子や軽やかに堕胎処置を施す様子は、犯罪の影をみじんも感じさせない。

娘の婚約祝いの席で警察がやってきて初めてことの重大さを知ったヴェラの演技がみごとで、この時の絶望のためにこの前までの明るいヴェラの演技があったのかと思わされます。

イメルダ・スタウントンの役を越えた迫真の演技に震えました。

犯罪者になってしまったヴェラを受け入れる家族たちの葛藤やそれぞれの心理描写もリアリティがあって見事です。

優しい人だからこそ起こしてしまった犯罪。当時のイギリスの社会的な背景をも浮き彫りにしながら、家族愛とは、善と悪とはを問う作品でした。マイク・リー監督の心理描写は素晴らしいのひと言。
leyla

leyla