吉村公三郎監督、若尾文子主演。
吉村公三郎作品は初鑑賞。
序盤の自然を映すショットから印象的だったが、まさかああ繋がるとは思わなんだ。
序盤以外も、兎に角自然を映すのがキレイすぎる。
雪や竹藪、山に田舎に、川。
自然に神や霊を見出す、或いは山岳信仰を背景に持つ日本人らしいショットの連続で、自然が存分に美しく見えた。
そしてその美しさと若尾文子の着物姿がまあよく合う。
思えば、若尾文子は京都の町や東京等といった都市を背景に観ていることが多かったが、こうして自然を背景にしてもうつくしい…。
特に最初の雪のシーンは惚れ惚れする。
物語は美しさを称えながらも、得も言われぬ残酷さを孕む、悲哀な物語である。
幸せと哀しみは表裏一体。
光が強ければ影は濃く落ちる。
何故この二人が報われないのか。
幸せへの道途は易しいものではなかった。
父が目をかけていた遊女というのもあり、主人公は結婚しても彼女の手に触れることさえもできない。それでも男は幸せだった。居るだけで幸せだった。
しかし、真に夫婦らしい幸せが叶った時、また二人に災難が降りかかる。
それがもう…。
悲劇がリアルで、大いに有り得る。
思い返すだけで心が重い溜息をつく。