Kamiyo

越前竹人形のKamiyoのレビュー・感想・評価

越前竹人形(1963年製作の映画)
4.0
1963年 原作水上勉 監督吉村公三郎 ”越前竹人形”
主演 若尾文子

福井県の山村の竹細工職人喜助(山下洵一郎)と歓楽街の娼妓玉枝(若尾文子)との恋情とその行く末を、“山紫水明の越前の自然”から
2人が懸命に幸せをつかもうとしますが、過去の過ちや人の悪意が次々と立ちはだかります。
望まぬ妊娠をし苦悩する玉枝を喜助はどう受け入れるのでしょうか。
人の生き方まで考えさせてくれるのは、
物語を覆う悲しい美しさが悲恋の哀しさを越えているからでしょう。
何もかも受け入れて幸福になろうとする2人と、
ラストに満ちた無常感が何とも言えない余韻を生んでいて、
このあたりが水上勉節というところでしょう。

クライマックスでヒロイン玉枝が彷徨する“焼け付く熱さに揺らめく
京都の街”までを舞台にして、天才的なカメラワークで魅せてくれます。
特に、雪景色、竹林のざわめき、(「羅生門」でお馴染みの)太陽光線を撮り入れた景観、河の流れと淀み等の自然描写に加えて、様々なカットや構図を用いて登場人物の心理を上手く浮き彫りにしています

若尾文子の匂い立つような一種神々しいまでの美しさが銀幕に刻みこまれた一本。このとき若尾文子30歳。
まさに女優として美しさは頂点に達している感がある。必見。
(それから、若尾文子さんの行水シーンは圧巻の官能美であります)
中村玉緒が若く”かわいい”

こういう陰鬱で悲劇的な話は大好きだ。日本映画の真骨頂だと思う。
ハリウッド映画では絶対に出せない味である。
日本人に生まれてよかったと心から思う瞬間だ。
Kamiyo

Kamiyo