Tラモーン

ケープ・フィアーのTラモーンのレビュー・感想・評価

ケープ・フィアー(1991年製作の映画)
3.9
久しぶりにデニーロ摂取です。


少女暴行の罪で服役していたマックス(ロバート・デ・ニーロ)は14年の刑期を終えて出所する。自分の担当弁護士でありながら、敗訴へと導いた弁護士サム(ニック・ノルティ)への復讐のため、彼とその家族の元へと近寄っていく。


これはもうとにかくデニーロデニーロ。
優しいおじさんも演じられるのにここまでイカれたサイコ野郎を演じられるのは流石としか言いようがない。

オープニングでいきなり映し出される刺青だらけの屈強な肉体のアップが迫力すげ。
しかも後々になって服役前は文盲だったのに、刑務所の中でいっぱい勉強して法律や聖書にめちゃくちゃ詳しくなってた明かされるとこは、よりその刺青が意味を持ってきてゾッとさせられる。

葉巻をプカプカ吹かしながら映画館で大笑いしたり、お洒落してオープンカーから声を掛けたり、車のキーを取り上げてちょっかいだしてきたり。大ごとではないんだけど、こいつ絶対ヤバいって思わせるような言い知れぬ不気味さが前半からバチバチ。絶対近いちゃいけないヤバい奴感が上手すぎる。

"失ったものを取り返す"

ストーリー的には複雑ではないものの、主人公サムの一家が抱えている家族内の問題がより物語に深みを与えていて、マックスを単なるサイコな悪役に留まらせない奥行きを感じる。
特に娘のダニー(ジュリエット・ルイス)への取り入り方や、それを受け入れてしまうダニーの危なっかしさや純粋さ、それを傷つけてしまっている両親の罪が、サムとマックスの関係性を単なる善と悪ではないものしている。
ある意味マックスの背中に彫られた"真実と正義"という十字架の刺青の通りとも言えるだろうか。

スコセッシらしい鮮烈なバイオレンスシーンもなかなか。
マックスがサムの不倫相手を暴行するシーンではイチャイチャからの(観ているこっちはすでにハラハラしている)バックマウントでアームロックからの顔面鉄槌からのガブゥ!はヒェっ…てなった。
武器持ち3人vs素手1人でも圧倒的強さでボコボコに返り討ちにしたり、ピアノ線でグェーのとこもめちゃくちゃ怖い…。

いや怖いという意味ではバイオレンスよりも車のそこに掴まっとんかい!のとこか。どんな執念だ。怖すぎるだろ。車の底から出てきたマックスを見ちゃった人めちゃくちゃに怖かっただろうな。

そして怒涛のラストシーン。
すごいね、ターミネーターかよ。


ラストシーンでサムは川で手を洗って血糊の汚れは綺麗になったけど、フラッシュバックしていたように、あの恐怖は決して消えないのだろう。それはサム自身の中にも罪の意識があるからかもしれないな。

"恐怖に怯え続ける限り彼は夢の中に現れる"
"過去を引きずることは毎日少しずつ死んでゆくことだ"
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