Yoshishun

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズのYoshishunのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

オトナ帝国や戦国大合戦といった名作に隠れてしまった、実は大人向きの作品。

行方不明になったカザマくんたち春日部防衛隊を探すなかで、何故か西部劇映画に取り込まれてしまった野原一家。そこに存在する架空の町・ジャスティスシティに囚われてしまった彼等は、映画の世界から脱出するべく、悪徳知事との対決に挑む。

クレしん映画第12作目は、シリアス多め+鞭打ち+しんのすけ本気の恋など、異色づくしの作品。

唐突な展開や設定に少々荒さを感じるものの、悪に果敢に立ち向かう家族、そして子供たちカスカベボーイズの覚醒は他の作品に引けを取らないほど熱い。特に舞台が映画の世界だからこそ成し得るトンデモ展開や、さらに従来の西部劇へのオマージュ(特に『荒野の七人』)も豊富なため、全く飽きさせない仕上がりに。徐々に記憶を失っていくくだりには退屈を覚える人もいるかもしれないが、物語を盛り上げるには必要なエッセンスに感じた。

主題歌も今回の映画を経て成長したしんのすけを励ますような歌詞になっており、今社会に出て働く大人をも励ます名曲になっている。歴代主題歌の中でも屈指のものであることは保証したい。また同時に流れる映像には、本編とは異なる特徴がいくつか見られ、そこが更に本作の異色性を際立たせている。本作のヒロインであり、映画の中の存在であったつばきちゃんのことを思うとかなり切ない。

数々の謎が全く明かされないのもあり、少しモヤモヤが残る劇場版ではあるが、個人的にはひと味違った作品としてもっと評価されてもいいのではないかと感じた。個人的にはクレしん映画で5本の指に入るほどの作品であった。

さて、最後に1つ気になったことを。

本作のラスト、無事に現実世界に戻ってきたしんのすけたち。最前列に座っていたのは春日部防衛隊の5人であり、映画館の座席が降りていたのは5席。
ところが、ラストカットでひろしが館内を見回していた時は何故か6席に増えている。
もしかすると、そこにはつばきちゃんも座っていたのではないか。彼女は本当は春日部の住人だったのではないだろうか。はたまた、単に演出上のミスなのか。仮に後者だとしても、名作『オトナ帝国』『戦国大合戦』を手掛けた原恵一による絵コンテであるため、何かを示唆してるにちがいない。

もし前者の場合、しんのすけの想いに応えようにもあまりに歳が離れすぎていたために、自らしんのすけから離れていったのではないだろうか。そう考えると、しんのすけが好意を寄せてもあまり頬を赤らめなかった理由も少し納得できる。そんな不思議なラストシーンだった。
Yoshishun

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