りっく

アウトレイジ ビヨンドのりっくのレビュー・感想・評価

アウトレイジ ビヨンド(2012年製作の映画)
3.7
ヤクザ社会の核となるもの。
それは人間同士の信頼関係であろう。
兄弟や親子の杯を交わし、仁義や道理を絶対に守り抜く。
そんな強固な関係性を築いている花菱会と対照的に、「裏切り」から発足している山王会の現体制は揺さぶられ、不信感が渦巻き、徐々に崩壊していくように仕向けられる。
薄情な人間たちが慌てふためいている様を、観客は俯瞰した位置から傍観できる。
その姿が実に面白い。

しかし、それは一方で予想外の展開を生み出しにくいことも意味する。
いつ誰が裏切るか分からないハラハラ感は、前作より大幅に減じている。
ビジネスや出世のことばかり考えている奴は、この世界では生き残れない。
だからこそ、どこから弾が飛んでくるのかが分かってしまうのだ。
特に終盤の展開は、殺し自体の画にも魅力がなくなっていく。
高橋克典が演じる花菱会のヒットマン集団のドンパチ場面は、あまりにも淡白すぎる。

いい場面も数多く登場する。
その最たるものが、山王会若頭である石原が大友によって殺されるバッティングセンターのシーンだ。
野球好きな北野武ならではの見事な発想。
マシーンの1球1球の残酷なまでの間。
誰もいない施設内に一定間隔で響き渡る、不気味な機械音と鈍い球音。
正確に顔の一部分を球がとらえ、徐々に腫れ上がっていく様。
前作でも印象的な暴力場面は数多くあったが、本作のハイライトは間違いなくこの場面だろう。

また、本作は超豪華俳優陣の「芸」を楽しむ映画でもある。
特に素晴らしいのは、大友が初めて花菱会へ出向く場面だ。
北野武VS西田敏行・塩見三省の、言葉と顔の壮絶な戦い。
標準語と関西弁が畳みかけるようにぶつかり合い、眉間にしわを寄せた顔がクロースアップで映し出される。
それだけでとてつもない画面の強度を生み出し、緊張感とテンションの異常な高まりは、木村が自らの指を食いちぎるような「荒業」でないと、収めることはできない。
それを実に楽しそうに演じている男たちの「いい顔」を観ているだけで、こちらも嬉しくなってくる。
りっく

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