【2001年9月11日ーー
4機の旅客機がハイジャックされた。
3機はターゲットに到達。
これは、その4機目の物語である。】
『Are you guys ready? Let's roll.』
(用意はいいか? やってやろうぜ)
ㅤ
この作品に主人公は存在しない。
これは物語ではなく、事実に基づいた羅列にすぎないからだ。
誰か1人にフォーカスするわけでも、どれか1つの物語を軸にするわけでもない。
ただ“あの日”それ自体を切り取っている。
変な言い方だが、“あの日”をもう一度目の前で繰り広げているかのような、限りなく事実に近い映像。
徹底的な事実の羅列。
無名の役者を集め、操縦士には実際に業務をしていた人材を起用。
司令塔の作業員役には実際に“あの日”に勤務していた人物も混ざっているという。
そしてなによりも、遺族への取材を丁寧に行い、そこで得た人物のバックグラウンドを役者に伝えていた。
どこまでも事実に近づけたこの映画には、セリフや動きだけを覚え、“演じ”た役者はいないのかもしれない。
事実への徹底。それは役者が“あの日”の人々そのものになることのように感じる。
遺族たちは、この映画で犠牲になった彼らの存在を知ってもらいたいと言及した。
その目的を大いに果たしている作品。