アキラナウェイ

ホテル・ルワンダのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

ホテル・ルワンダ(2004年製作の映画)
4.2
昔、ルワンダ虐殺に関する本を読んで、その恐ろしさに驚愕した。

ツチ族とフツ族。
フツ族によるツチ族の虐殺。

つい昨日まで、隣近所で暮らしていた同国民が虐殺者と犠牲者に変わる恐怖。この2つの民族はもともと同一の由来を持ち、その境界が甚だ曖昧で、ベルギー植民地時代に完全に異なった民族として隔てられたとの事。明確な違いなどないのに。

ルワンダ政府の推察によると、730万人の人口のうち、117万4000人が約100日間のジェノサイドで殺害されたという。

「ホテル・ルワンダ」のDVDを何度も手に取り、棚に戻してきた。この現実を映像として観るのに、いつまで経っても覚悟が出来なかった。

ようやく、覚悟が出来たので鑑賞。

フツ族過激派のツチ族への虐殺が始まり、ホテルの副支配人だったポール(ドン・チードル)は、ホテルにツチ族や穏健派フツ族の難民を受け入れることを決断する。

生々しい。

アフリカの小国で、彼らは平和に暮らしていたのに。
フツ族の過激派がラジオを通じて囃し立てる。
「高い木を切る時が来た」
それは、フツ族と比較して背の高いツチ族を抹殺しろという号令。

ポールはフツ族でありながら、ツチ族の妻を持ち、ホテルの副支配人として、あくまで「理性的に」行動する。

この、有事の際に「理性的に」行動する事の尊さ。
惑わされずに自らの価値観を信じる事の大切さ。

しかし、彼らが出来る事はホテルに立て篭もり、国連や西欧諸国の介入をただひたすら待つ事だけ。

悲しい事に国連も、西欧諸国の兵士達も撤退してしまう。

雨の中呆然と彼らを見送るポールの姿が印象的。

また、報道カメラマン役のホアキン・フェニックスの演技も出番が少ないながら素晴らしい!!撤退が決まり、ホテルを出る時に傘を差されて「やめてくれ、恥ずかしい」という一言。自らの無力さを滲ませる演技が光る!!

道を埋め尽くす無数の死体。

泣いた。
こんな悲しい事実を、心で受け入れようとすると涙が止まらない。

ナタでずたずたに切られて殺されるので金を渡して銃で一思いに殺すように頼んだ。女性は強姦された後に殺された。幼児は岩にたたきつけられたり汚物槽に生きたまま落とされた。乳房や男性器を切り落とし部位ごとに整理して積み上げた。母親は助かりたかったら代わりに自分の子どもを殺すよう命じられた。妊娠後期の妻が夫の眼前で腹を割かれ。夫は「ほら,こいつを食え」と胎児を顔に押し付けられた。——Wikipediaより抜粋

映画の描写が決して100%でないと知り、また震える。

じゃあ、この映画で僕らは何を学ぶべきか?

それは…。

メディアに踊らされるな!!
多数派に流されるな!!
自分の価値観で見極めろ!!

曇りなき眼(まなこ)で。
理性的に行動しよう。

そんな事を強く心に残す、人生の教科書。