Aika

マイ・レフトフットのAikaのレビュー・感想・評価

マイ・レフトフット(1989年製作の映画)
4.0
生まれつき脳性麻痺で左足しか動かなかったクリスティ・ブラウンが、画家として成長していく自伝映画。

ダブリンの貧しい家で22兄弟の10番目に生まれたクリスティ。
街の人からも父兄弟からも厄介者扱いされていた彼は、ある日その悔しさから左足で初めて一言「Mother」と書く。

始め言葉を発することすらままならなかったクリスティの苦しみは、私には決してわかるものではない。
それでも彼の日常の楽しみや悲しみは私たちと何も変わらないように感じられる。それは母や兄弟の分け隔てない彼への接し方と愛情、クリスティ自身が全身から発する生命力がとてもポジティブな力を持っているから。

自己表現の場と言葉を得て、愛を過剰に求めてしまうのもわかる。ここまで来ると彼の苦しみはもはや障碍者だからではなく、人間だからこそ。
それは彼自身の人生を取り戻した証。

身体にも瞳にも爛々と生を宿したダニエル・デイ=ルイスと、母の無償の愛を体現したブレンダ・フリッカーがダブルでオスカー受賞。
このふたりでなくてはこの良作は生まれなかっただろう名演。圧倒されます。

淡々としているようで、内には熱い情熱と強い生命力を秘めているような作品。それはまさにクリスティ・ブラウンそのもの。
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