「アルセーヌ・ルパン」

冒頭、鳴り響くパトカーのサイレン。真夜中のヴィクトルユゴー通り、怪盗ルパン、警部、舞踏会、大富豪、変装、神出鬼没、公爵、ルーブル美術館。今、世紀の怪盗ルパンと警部の究極の戦いが始まる…本作は1932年にジャック・コンウェイが監督した探偵小説ルパン物の原作者モーリス・ルブランの題材を映画化した作品で、この度DVDで初鑑賞したがサスペンス映画の王道が全て詰め込まれた作品だが個人的には普通かな。ただ、スピーディーな展開は面白い。退屈しない。

さて、物語はアルセーヌ・ルパンの名で知られる大胆不敵な怪盗がパリの富裕層を恐怖に陥れる。ルーブル博物館のモナ・リザまでもが脅かされる始末…。神出鬼没のルパンの大体な犯行は連日のように続く。深夜のパリ、サイレンの音が響き渡る。大富豪グルネマルタン邸に盗賊が押し入る。ゲルシャール警部が現場に駆けつけると、車の上に縛られたパリ社交界の花形シャルムラース公爵を発見。刑部は彼がルパンと睨んで証拠を手に入れようとする。やがてルパンが仇敵のようにつけ狙う。マルタンの別荘を舞台に世紀の怪盗と警部の究極の戦いの幕が切って落とされる。

「アルセーヌ・ルパン」シリーズ（1905～）の映画化の決定版。原作者モーリス・ルブランによる書下ろし戯曲を脚色。ルパン役は「グランド・ホテル」（1932）のジョン・バリモア、宿敵の警部役は兄のライオネル・バリモアと兄弟共演。監督はロン・チェイニーの遺作「三人（トーキー版）」（1930）のジョン・コンウエイ。

パリを騒がす神出鬼没の怪盗ルパン。大富豪の屋敷から通報を受けたゲルシャール警部（ライオネル・バリモア）は直ちに駆けつけ現場で縛られていた男を連行する。しかし彼は社交界の花形シャルムラース公爵（ジョン・バリモア）だった。そんな矢先、ルパンから警察に「明晩シャルムラース邸の舞踏会で宝石を頂く」と犯行予告文が届き、警部は「今度こそルパンを逮捕しなければクビだ」と上司から宣告を受ける。総力を挙げた警備体制で挑む中、会の主催者シャルムラース公爵はロシアの伯爵令嬢と名乗るソニアと出会い一目惚れする。　実は彼女は警部が刑務所からスカウトした女詐欺師だった・・・果てはルーブル美術館の「モナリザ」を巡る攻防戦、ルパン対警部の勝負の行方は。。。

これこそ自分の求めていたルパン映画。女に弱く非情にはなりきれないルパン、勤続25年の人情家な警部、ルパンに色仕掛けで接近する女詐欺師ソニアと、まさに「ルパン三世」の源流がここにあった。

演出の小技が楽しく、超巨大ケーキや感電仕掛けの金庫、ルパンとソニアの「カリガリ博士」“眠り男”のモノマネなど、くすりとさせられるシーンが随所に散りばめられている。終盤、シーソーゲームの勝負の行方は人情味のある大団円を迎え、爽快な気分が残る終幕だった。

ちなみに当時のキャッチコピーは「彼は“最高の宝石”つまり女性の心を盗んだのだ！」。海外評価は高いが日本では埋もれている逸品。

referring the novel
《Arsène Lupin, gentleman-cambrioleur》(1905)
by Maurice Leblanc(1864-1941)
Leonardo da Vinci(1452-1519)
《La Gioconda》(c.1503-1509)
in Paris