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パリ、夜は眠らない。のmsのレビュー・感想・評価

パリ、夜は眠らない。(1990年製作の映画)
4.1
80年代のニューヨーク、ハーレムのゴールデンエイジを生きるゲイたちのドキュメンタリー。黒人であること、ゲイであること、謂れなき2重の社会的ハンデを背負い生きる彼女たちの伸びた背筋に魅せられっぱなしだった。

ボールに集う彼女たちは、派手なファッションでランウェイを歩き、ヴォーギングの美しさを競い合う。一見ゲイ・カルチャーは華やかでパワフルだけど、マイノリティであることが彼女たちに落とす影の大きさは計り知れない。いまだマイノリティに対する視線は厳しいことが多いが、40年も昔のアメリカではそれがもっと苛烈だったんだろうな。

リッチになりたい、有名になりたい、女になりたい、抱く夢はそれぞれだけど、その夢に貪欲で素直な姿はとても眩しい。
本当の自分でいればいい、ありのままでいればいいと言うけれど、彼女たちは着飾り、ヴィヴィッドにメイクアップし、自分ではない誰かを舞台で演じることで「本当の自分」を実現する。その努力と決意の先にある自己の肯定はとても尊いものに思えた。


ル・ポールのドラァグレースのファンなので、その中でよく使われる「リーディング(アラ探し)」や「カテゴリー」「ヴォーギング」「エクストラバガンザ」「リアルネス」というワードのニュアンスを掴めたのも収穫。
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