へちまびと

スパイ・ゲームのへちまびとのレビュー・感想・評価

スパイ・ゲーム(2001年製作の映画)
4.2
好きな映画を聞かれて思い浮かぶ作品の一つ。

ロバートレッドフォード扮するネイサン・ミュラーが、CIA局内で過去を振り返りながら、あの手この手でかつての弟子であるトム・ビショップ(ブラッドピット)救出を企てる話。

ビショップの訓練中、ミュラーは冷徹なスパイのルールと生き残る方法を教える。
ところがビショップがピンチになるや否や、弟子に伝授したルールを自ら破っていく。

「勝手に動けば俺はお前を助けに行かない」と言ったくせに、「勝手に動いて」味方の組織を欺き、金が必要となれば、ビショップには「引退まで絶対手をつけるな」と教えた自分の老後資金も弟子の救出経費に充てる。

ラストシーン、バックミラーにミュラーのまっすぐな目が一瞬だけ映るが、すぐにサングラスで隠れる。
口から出る冷たい言葉と心に秘めたる熱い本音が全然違う、昔気質の男ネイサン・ミュラーを象徴的に表しているシーンだ。

劇中、ミュラーがCIA局員の話を煙に巻くため何気なく話す、一見どうでもよさそうな話にこの男の人生観が詰まっている。

「子供の頃、夏になると叔父の農場に行った。叔父は、よく働く耕作馬を大切に飼っていた。あるときこの馬が脚を折って立てなくなった。医者は安楽死を勧めたが、そのとき叔父はなんて言ったと思う」
「他人には任せない。自分の馬は自分で始末する」