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秀子の車掌さんのzhenli13のレビュー・感想・評価

秀子の車掌さん(1941年製作の映画)
4.3
とても好い!癖のある人たちを拾っていくバス映画に間違いはない。ユーゴスラビア映画で『歌っているのはだれ?』という作品があって、そのことを急に思い出した。あと矢張り『駅馬車』ですね。おじさんが大荷物をバスに積み込むところや鶏がバスから飛び出してみんなでつかまえにいくところを引きで捉えたショットはジャック・タチ『のんき大将』なんかを思い出した。

バスに添乗するデコちゃんの草臥れたズックがアップになる。「ウチの前で停めて頂戴」と実家へ駆けてってお母さんに土産を渡しつつ下駄に履き替えて畦道駆けてく、まっすぐの脚。好いなぁ。

デコちゃんの素晴らしさはもとより、藤原鎌足の存在が大きい。デコちゃんと粋なコンビで、お人好しの運転手役。「なにしろ俺のたのしみはクルマを愉快に運転することだからね」この科白が好き。「そうよ。私だって会社のことを思うってより、自分の仕事を立派にやりたいの」というデコちゃんはあまたの成瀬映画で実現したくても出来ない「女の自立」をささやかに実現できる予感を持たせる。が、爽やかな中にコントのような軽さで皮肉な結末を用意しているところがまた…
夏になったらラムネの栓をポンとやって、氷に注ぎたい。
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