Miver2

青い乳房のMiver2のレビュー・感想・評価

青い乳房(1958年製作の映画)
4.2
今日は久し振りの神保町シアターで鈴木清順監督「青い乳房」を。
過去の出来事と現在の人間模様を軸にして描かれて行く物語がとても観応えあって面白かったな。
所々でそのカット割りに釘付けならずにはいられなかったし、登場人物達を演じる俳優陣それぞれの存在感を存分に楽しむ事が出来たから良かった。
特に若き日の小林旭の格好良さ、焦燥や苛立ちが物語を通じて吹き出して来るようなあのヒリヒリ感と演技が最高だったもんな。

池袋駅前を歩く小林旭と稲垣美穂子が出会って、その距離が縮まるシーンがとても良かったし、ガード下から展開するあの画と構図は観ていてたまらない物があった。
そしてフラッシュバックをああいう形で描いて行くのがとても観応えあって面白かったし、その苦悩や葛藤の描き方に遣る瀬無さを強く感じたりもしたけれど、だからこそ観て良かったなと思った。

あれはジャズ喫茶か、洗練されたジャズの使い方とか、唄で物語を語ってた所とか、音楽の使い方がとても好き。
そして若い2人が街を歩く時にその足元をアップで映し出してたら動き出すあの展開が最高だったな。
あと海で2人が歩く時の足元をアップにして映し出す場面もとても良かった。

物語が描かれて行く中で、清順監督のの映画で野呂圭介さんや二谷秀明さんが登場するのを観ると安心するし、それぞれの存在感楽しめるのが好き。
二谷秀明演じる役柄の真っ直ぐなその誠実さが見事だったし、その想いを語る時にアップにして撮ってたのが最高だったなあ。

若い男女の関係が深まって行く中で描かれる男女の破綻、過去の出来事に向き合う事での鬩ぎ合いだとか、遣る瀬無かったけど観ていてとても面白かったしね。
それぞれの気持ちが良くも悪くも真っ直ぐにヒリヒリと切実に物語に焼き付いて行くあの描き方には釘付けにならずにはいられなかった。

その出来事を巡る駆け引きと攻防がとても観応えあって面白かったし、二谷秀明演じる役柄がまさかああなるとは思ってなかったので、驚いたりもした。
しかし最後、あの終わり方とても良かったなあ。
思わず泣いてしまったよ。

今回久し振りに清順監督の映画を劇場で観て思うのは、もっと劇場で清順監督の映画が観たいなと。
個人的には塚本晋也監督、豊田利晃監督、鈴木清順監督が特に好きなので、大好きな映画監督の映画は劇場で見るのが一番だと改めて思う。
清順監督のまだ未見だった作品を今回観る事が出来て良かったです。
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