つかれぐま

アポロ13のつかれぐまのレビュー・感想・評価

アポロ13(1995年製作の映画)
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【あの名作の反転】

『2001年宇宙の旅』にインスパイアされた作品は多いが、本作もその一つ。劇中のトム・ハンクスの台詞にも、作品名がメタ的に登場しており、ロン・ハワードが意識していたことは間違いない。

『2001年』の反転で構成された(アンサーならぬ)カウンター作品の趣だ。かの作品では冷徹なまでに無力なものとして扱われた「人間力」。本作の主題はそこだ。AIの力に頼らない、おそらく人類史で最後の「人間による」ミッション。そのアナログぶりをトムハンクスら宇宙飛行士と、エドハリスらNASA管制官が血の通った演技で見せる。宇宙飛行士には到底見えないケヴィンベーコンの起用も、そんな人間臭さへの拘りかも。

13というキリスト教が忌み嫌う数字。
本作の序盤でも、なにかとそれに触れ、13号のミッションは最初から失敗する運命にあったのだという細かな縁起悪い演出が見られる。これが、その運命を「輝かしい失敗」に反転させたのは人間の意思の力、という後半に呼応している。『2001年』が、木星ミッションを全て神(概念としての)の筋書きとして描き、人間はそこにライドしたに過ぎないというプロットの真逆。

実話ベースでありながら、ちゃっかりドラマチックな演出もキューブリックの反転か。こういう狙いなら宇宙空間で音がするのも「あり」。流石の職人監督だ。