皿鉢小鉢てんりしんり

ギルダの皿鉢小鉢てんりしんりのレビュー・感想・評価

ギルダ(1946年製作の映画)
3.5
いきなり画面に向かって転がってくるサイコロに、主人公のテンションの低いナレーション。その後木箱のたくさんある薄暗い空間で、金を取られそうになったところを、仕込み杖おじさんに救われる。お返しをする、という主人公に、命の?と尋ねられ、いや、タバコのと気の利いた返し。ノワール好きを大いに刺激する序盤の流れ。
イカサマを見抜いておいて、自分のカジノに誘い、そこでのイカサマを理由にオーナー室に呼び出す。
主人公の行動が、個人のコントロールを超えた巨大で得体の知れない因果律に飲み込まれていく感じも、いかにもノワールの肝をおさえている。

ファムファタール登場シーンも素晴らしい。顔を上げたリタヘイワースのアップ、肩出し状態から右肩だけを覆うことで、かえって左肩の露出に注目させられる。そこから、それこそ“肩越しショット”に切り返すという悪意あるエロ編集、見事!

自分の命を救ってくれたボスの妻で、昔の女でもあるリタヘイワースの浮気の見張りをやらされる主人公、という魅力的な三角関係構造。ただ、この関係性の魅力は、いまいち引き出し切れてない感じだ。ドイツ人との取引関連のストーリーが三角関係と全然うまくハマっていないからだろう。

どれだけノワール的であっても、この映画自体はフィルムノワールではないので、“ヤバいこと”が起きない。だからボスを飛行機事故で一時退場させてしまってからは、どんどんただの愛憎劇になっていっちゃうし、ラストのオチの付け方も投げやりにもほどがある。というか襲いかかってくるあいつを倒すことと、主人公とリタヘイワースの愛憎は全然関係ない問題のはずなので、なんの解決にもなっていない。それこそ死んだと思って話から完全にいなくなってたわけだから。

ヘイワースの歌は良かった。不思議な歌詞で、とてもよい。ただモンテビデオでのダンスシーンは一つで充分。