南森まち

続・荒野の用心棒の南森まちのレビュー・感想・評価

続・荒野の用心棒(1966年製作の映画)
4.0
メキシコ国境付近の寂れた街。横暴な権力者とメキシコ人の荒くれ者の抗争で一般市民が疲弊する中、棺桶を引きずった一人のガンマンが街に現れる…。

「荒野の用心棒」とは全然関係ないストーリーで、こちらがより名作とも言われています。コスられ続けている映画なので、斬新ではありません。しかし92分にすっきりまとまった素晴らしい映画です。

「座頭市」とかの日本時代劇みたいな設定です・・・って黒澤映画を参考に作られてるんだから当たり前なんですが、おかげで日本人には非常に頭に入りやすいストーリーになっています。
公開当時は残酷描写で規制され、米・英ではなかなか公開されなかったとのことですが、これまた時代劇を見慣れた日本人には「どこが?」と思える程度の描写で安心です。痛そうなシーンはカメラが逃げるし。

大きく時代劇と異なるのは、スタイリッシュさです。
頭に残る「ジャンゴ~♪」のメロディ。
泥だらけで棺桶を引きずって現れるヒーロー。
ヒロインが(清純な村娘ではなく)荒くれ者達に蹂躙される売春婦。
弱き者に酷い言葉を投げつける、登場人物中でも特に下劣なキャラクターが神父。
金を追い、底なし沼に落ちて死にかける主人公。

このあたりの設定が示唆することは、公共感や宗教への信頼が欠けていった時代を表現しているようで、考察し甲斐があります。
英雄物語を逆手にとって「きれいなお話」にしないことで、大人の哀愁を描いた物語でした。