似太郎

大砂塵の似太郎のレビュー・感想・評価

大砂塵(1954年製作の映画)
4.7
【やっぱり女はコワイ!】

以前、映画好きの友人と西部劇について話し合ったのだが、その友人はどうも【西部劇の神様】と未だに崇められるジョン・フォードが苦手らしい。「駅馬車も観たけどピンと来なかったなぁ」と話している。

「逆に蓮實とかが褒めてるニコラス・レイの西部劇の方が反体制的で好きだ」とも。随分、珍しい意見を聞いた気がする。本作『大砂塵』はそんなニコラス・レイの中でも突出して異様なムードが特徴のB級西部劇。

主演のスターリング・ヘイドン演じる「ジョニー・ギター」(何故かいつもアコギを手にして歌っている)と悪どい酒場の女主人で権力者のジョーン・クロフォードとの淡いラブ・ロマンスを練り混ぜて作られた、いわゆるジョン・フォードが作る正統派の西部劇とは真逆のひねくれた作りがユニーク。

脚本はフィリップ・ヨーダン。この人もある意味伝説の脚本家であり、ニコラス・レイと共に赤狩りのブラックリストに載せられた人物である。要するに本作は50年代アメリカに於ける「アンチ西部劇」というか、今に続くインディーズ映画の元祖とも言うべき映画なのである。

ヌーヴェルヴァーグの監督は勿論、スコセッシ、ジャームッシュ、タランティーノらをも魅了したアクの強い映像や不条理感漂うアブノーマルな展開など、どこを切ってもニコラス・レイ節の炸裂したカルト的問題作である。

うーむ、たしかにジョン・フォードみたいな名匠、或いはお利口さんの作る西部劇とは打って変わって「変化球の連発」みたいな所がその手の映画青年を虜にするのかも知れない。私はジョン・フォードの西部劇もハワード・ホークスも好きだし、ウィリアム・ワイラーですらOK🙆‍♂️な人間なので、特に拘りはないですが…。

どちらにせよ「低予算映画」ならではの味わいってのがある。風格漂うゲテモノみたいな所も含めて。(勿論、褒め言葉ですよ?)
似太郎

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