ベビーパウダー山崎

バレンチノ/ヴァレンティノのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

3.0
ケン・ラッセルにしてはいまいち。役者が悪いのか、端から興味が持てない題材だったのか、どこかグルーヴに乗れていない。ケン・ラッセルの暴力的なまでの過剰さも単発で目に飛び込んでくるばかりで深くえぐってこない。宗教も肉体も音楽も頼りないケン・ラッセル映画は寂しい。見せ場となるべき終盤のボクシングも男と男の激しさ、裸祭りにでもなるかと期待したが、物語の進行として段取りをこなしているだけのような撮り方でエレクトさせてくれない。もっともっとキチガイになってこちら側の感情をめちゃくちゃにして欲しい。そもそもが想像より遥かに綺羅びやかで狂っていたかつての映画の世界を「映画」として再度組み立てる難しさ。挑戦したがる作家は多いが苦戦する難題。
オレンジを掴めずに倒れて死ぬヴァレンティノ、マスコミに馬鹿さにされ続けた白化粧が棺桶の死化粧へと繋がっていく。生への喜びか美しい死で終わるケン・ラッセル映画。