Eike

ストリート・オブ・ファイヤーのEikeのレビュー・感想・評価

3.8
日本では公開時には大ヒットにはならなかったものの、早い時期に再評価が進んで現在も愛されている「ロックンロール青春アクション」。
監督・脚本のウォルター・ヒルは前作に当たる「48時間」が興行面・評価面共に大成功をおさめていた時期で、まさにビッグウェーブを捕まえようとしていたところといった雰囲気。
当然のように本作にも大きな期待が寄せられていた訳です。ただ、ご存じのとおり本作はアメリカでは大コケした「失敗作」として有名ですね。

本作が公開された1984年のサマーシーズンと言えば「ゴースト・バスターズ」「ビバリーヒルズコップ」そして「インディージョーンズ魔宮の伝説」など文字通り映画史に名を残すヒット作が次々に生まれた「当たり年」として語り草になっております。
もしかしたら娯楽としてのアメリカ映画が一番元気であった頃と言えるのかもしれません。
確かに本作にしてもその独特なスタイルを含めて非常に「勢い」があります。
当時ロードショーで見て本作に熱狂した身としては「いつか…どこかで…」で始まる「ロックンロールの寓話」である本作の「洒落」を理解しないアメリカ人の無粋さが不思議だったものです。
やっぱりこの「マンガ(コミック)感覚」は時期尚早だったのかもしれませんね。

ところで本作、色々興味深い逸話が。
・女性ロックシンガー、エレン・エイム(D・レイン)は設定では28歳だったのですが、当時D・レインは18歳。それもあってヒル監督は彼女にこの役が務まるか心配だったそうですが、オーディションに現れた彼女は黒のレザーパンツにハイヒールブーツとメッシュのジャケットと正にロッカー風で実にクールだったそうでそれを見て彼女に決めたそうです。
レーン嬢としても「リトル・ロマンス」でデビューして以来、どこか清純な女性のイメージばかりが続いていたことに不安が合ったそうで、このロッカー役でイメージを広げたい思いが強かったのだそうです。
・本作の大きな魅力の一つは全編にわたってブリブリと鳴り響くライ・クーダーのギターサウンドですが、元々はジェームズ・ホーナーが音楽担当であったらしく、曲も既に出来上がりつつあったらしいのですが、監督のウォルター・ヒルの意向で最終的に変更となったそうです。
・タイトルのネタ元はB・スプリングスティーンですが自分のバージョンでなくカバートラックが使用されることを嫌って楽曲提供は取りやめに、
タイトルのみが残ることとなった模様。
・本作のヒーロー、マイケル・パレ演じるトム・コーディーの背景はほとんど明かされておりませんがこれは彼を主人公に据えた3部作とする企画があったため。結局実現せず、残念。
・いいアクション映画にはいい悪役が必須。主人公トム・コーディと敵対する暴走族の頭、レイブンを演じているのは今やすっかり名優の域にあるウィレム・デフォー。本作は初めての大役だった訳で、本作以後”To Live and Die in L.A.”そして”Platoon”へと飛躍して行く訳で本作はその足掛かりとなった作品と言えそうです。それほど本作では強烈な存在感を残しております。

監督であるW・ヒルの趣味がフルに展開された「おたく度」の高い作品だった訳で良い意味で「映画愛」に溢れた娯楽作です。
若い世代の方々なら未見の方も多いと思いますが今見ても十分カッコ良い作品ですよ(いささかクサいところも含めてネ)。
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