ボブおじさん

キャスト・アウェイのボブおじさんのレビュー・感想・評価

キャスト・アウェイ(2000年製作の映画)
3.7
映画は3つのパートからなっている。
①主人公のチャック(トム・ハンクス)が宅配便業者のシステムエンジニアとして忙しく働き、恋人のケリー(ヘレン・ハント)もいる生活。
②飛行機が墜落して無人島に漂着してからの4年間の〝孤独な〟サバイバル生活。
③ようやく救出された彼が送る、故郷での戸惑いの生活。

この3つが絶妙なバランスで映し出される。当然、見どころは②の〝孤独な〟サバイバル生活のパートなのだが、①と③の生活が絶妙なスパイスとなって物語を引き締めている。

「Cast Away」とは直訳すれば難破する・漂流者・見放された人の意味だが、文字通り彼は難破して世の中から見捨てられた漂流者となった。

島に漂流した彼が、そこが海に囲まれた無人島だと知った時の絶望感は如何程であったろう。そしてその後に襲ってきた〝無音の孤独〟普段気にもしない雑音が恋しい。一緒に漂流してきた荷物を使ってのサバイバル術は現代のロビンソン・クルーソーだ。無人島での過酷な生活にリアリティを出す為、トム・ハンクスは撮影中に20キロ以上の減量をしたという。

孤島でのサバイバル描写を除けばストーリー的には一見目新しさはない。兵役などの空白の期間を終えて戻ってみたら世の中は動いていたという話は、「シェルブールの雨傘」「ひまわり」などの例をあげるまでもなく、これまでも再三描かれてきた。

だが監督のロバート・ゼメキスは③のパートでもう一捻りして見せる。当然ながらチャックがいなくても世の中は回っている。電気も火も食べ物も難無く手に入る世界で、チャックは仕事や人間関係からも孤立し、世間の中で漂流してしまう。 無人島とは違う〝雑音の中での孤独〟。無人島では生きる希望だったケリーとの未来はそこには無い。彼女の家に〝黄色いハンカチ〟は掲げられていなかった。彼は再び「Cast Away」となる。

行き先を失ったチャックの前に現れた天使の羽根。彼はどこへと向かうのだろう。余韻を含んだラストがいい。



公開時に劇場で鑑賞した映画を動画配信にて再視聴。