スタッフやキャストに(アメリカから見た)英国の香りを漂わせて作られた、60年代のヒースロー空港が舞台のグランドホテル形式(っていまあんまないよね)の逸品。
まず、タイトルから観客を往時の旅へ誘い出す。パンナムとかSASのロゴやフライトバッグ、バーのスツールやジュエリーなどが背景にあしらわれ、上顧客のサロン的なムードへ。
空港のVIP専用待合室で起きるドラマ。愛憎や金銭問題に人物たちが右往左往する各パートが(現代の目からはマッタリ気味に)展開しながら、少しだけ重なり合い、ゆったりしたフィナーレに向かうあたりの呼吸が、実に良い。
ジバンシーにブルガリでバッチリ決めた有閑夫人のリズ、生真面目な秘書マギー・スミス、ノータリン女優エルザ・マルティネリ、これでオスカー助演賞の愉快なオバチャン役マーガレット・ラザフォードなど、明確なキャラ分担をスターと演技派女優が演じていてお美事です。まあ、男優もいいんだけれど。
史劇の音楽が得意なミクロス・ローザのテーマ曲も◎。