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おかしな奴のmitakosamaのレビュー・感想・評価

おかしな奴(1963年製作の映画)
3.9
東映YouTubeにて。渥美清が戦中・戦後に活躍した落語家・三遊亭歌笑を演じた伝記映画。これが実に良かった。

実際に不細工で売っていたという歌笑。目が悪く兵役に取られることも無かったが、持ち前の明るさで落語家の門を叩く。
田舎者のように扱われてたんだけど、普通に多摩方面の出身なんだよね。当時は同じ東京でも35区以外は相当田舎扱いされていたんやね。

金馬に弟子入りし金平となるが中々鳴かず飛ばず。ライバル的なとん平にも差を付けられる。
恋い焦がれていた(三田佳子)はお嫁に行っちゃうし自暴自棄になることも。
でも師匠や兄弟子、呼び込みの兄ちゃん(田中邦衛)などが応援してくれる。

お嫁に行った三田佳子がくれた石川啄木の詩集を元に、純情歌集なるネタを編み出し人気者に。

そして段々と戦局が厳しくなっていく。この少しづつ軍国主義になっていく様子が美味く表現されていて感心する。気がついたら女はモンペだし、劇場に玉砕云々といったスローガンが掲げられる。憲兵が幅をきかせ出し、そして召集令状がきた兄弟子は自殺してしまう。

自殺した兄弟子の亡骸を前に、空襲に見舞われ、そして逆プロポーズを受けるドラマチックな展開。この夫人が南田洋子。

終戦の混乱期は寄席と揉めラジオで活躍。人気者になる。
その頃パンパンになった三田佳子と再会。これまたドラマチックな展開。三田佳子はこっちの方が似合う。

その後寄席に戻り真打ち昇進。だが事故で短い生涯を終える。
奥さんとラブラブなのが死亡フラグとなっているのが悲しい。しかも事故の際に「天国への階段」の看板に覆われる。

渥美清の哀愁ある演技が、歌笑の波瀾万丈な人生を上手く表している。泣き笑いの物語で、昨今で言うような浅草キッドの様な芸人賛歌。
この映画が刺さる人は案外多いのでは無かろうか?
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